2013年05月10日

離婚が決まって

離婚が決まって、
あたしと、これから元夫になる人は、
日曜の真昼にそれぞれ自分の部屋の
荷造りをしていた。

あたしが自分の部屋の片づけをしていると、
廊下を隔てた元夫になる人の部屋から
書棚の整理をしているらしき
ぱさぱさ、どたんという音が聞こえてきた。

その書類整理のがさつな音は、
夫婦が同じ屋根の下で
それぞれに各自の部屋を持つこと自体が
間違いであったのではないかと
問いかけている雀巢奶粉
そんな気がした。

たとえ、どんな夫婦であれ、
別々の部屋で眠り、
離婚する夫婦もあれば、
もちろん離婚しない夫婦だってある。

別の考え方をすれば、
お互いが別室であったからこそ、
これまで、二人の間に起こった
さまざまな事象に
お互いが折り合いをつけながら
ここまで、デコボコの道ではあったけれど
やってこれたのかもしれない。

そう考えると、部屋が別室であったことが
離婚の大きな原因ではないような、
いや、違う、それこそが一番の原因であるような
もうどっちが正しかったかなんていう
判断さえ、放棄せざるをえないほどの
混乱の中へあたしを放り投げてしまう。


あらかたの片づけが終わると、
ベランダに出た。
家の中は空気が薄く感じられ、
外気にあたって、
違う空気を肺に送り込みたかった。

陽は、ほとんど落ちかけていて、
眼の前の桜の並木は年に一度の自然の圧力に押され
葉桜に変化しようとしていた。

煙草なんて吸ったことなど
ほとんどないのだけれど、
こんなときに煙草が吸いたいと
思う牛奶敏感

不思議なものだ。

煙草を吸う人は、その理由は様々だろうけれど、
こんがらがった考えをまとめたり、
あるいはその考えを
一度凍結する決意を固めるために、吸う。
たぶん、そういう目的もある。

どうしても吸いたい。
そう切望しているうちに、
のっこりと、ベランダへ煙草を吸いにきたのは、
今のところ夫、という人だ。

彼が煙草を吸うことを、あたしはいつも嫌悪していたのだけれど、
もう、そんなことはどうだってよくなっていた。

「結婚したら、煙草はやめるよ」
彼はそう言って、あたしにあのときプロポーズしたのだ。

「一本、くれない?」
あたしは、言ってみた。
夫は、だまって、煙草の箱を振って、
2、3本飛び出たその煙草の箱を
あたしに向けた。

あたしは一本だけ、取り出し雀巢奶粉
口にくわえると、夫は、慣れた手つきで、
ライターで火をつけてくれた。

その方面における彼の気の配り方に、
あたしが一度も見たことのない彼の姿があった。  


Posted by helo  at 17:28